マネキンを用いた心肺蘇生時の気管挿管デバイスの検討
―初期臨床研修医を対象として―

 

1兵庫医科大学病院麻酔科学講座、2兵庫医科大学病院中央手術部

駒澤伸泰1、植木隆介1、野村 1、井谷 1、小濱華子1、岡野 1、多田羅恒雄1、上農喜朗2

 

背景:現行のG2005 AHAACLSガイドラインは胸骨圧迫中断の最小限化を提唱している。蘇生中に胸骨圧迫を中断せずに気管挿管が施行できれば、@嘔吐物の誤嚥を防止し気道保護 A換気量の適正化 B連続胸骨圧迫が可能 となり、蘇生率向上の可能性がある。今回、初期臨床研修医を対象として、マッキントッシュ喉頭鏡(ML)とエアウェイスコープ®AWS)による胸骨圧迫中の気管挿管を調査した。

方法:当院麻酔科初期研修医18名(2ヶ月研修)を対象として、AirMan®(Laerdal)を用いて、McLAWSを用いたときの気管挿管の時間と成功率に対する胸骨圧迫の影響を検討した。統計はStudentのt検定を用いP0.05を有意とした。

結果:18名の麻酔科研修医における平均McL使用回数は、44.2±11.4回でAWS2.7±1.6回であった。McLを用いた胸骨圧迫中の挿管までの時間は、非胸骨圧迫時に比して有意に延長していたが(14.9±4.0 VS 22.7±6.5, P0.01)、AWS群では、有意な延長を認めなかった(13.3±3.8 VS 14.5±3.4, P=0.17)。また、胸骨圧迫中の気管挿管成功率に関しては、McL群が55.5%であったのに比してAWS100%であった

考察:McLを用いた場合、声門は胸骨圧迫によって上下運動しており、チューブの声門通過が行いにくいと思われた。AWSは、声門及びチューブが一体となって上下運動し、チューブと声門の相対的な位置は変化しない。ゆえに、AWSの画面を指標として挿管が正確に行えると考えられた。初期臨床研修の2ヶ月という短期研修でも、AWSの積極的な使用により、蘇生中の挿管がより安全かつ短時間に行える可能性がある。

結語:マネキンを用いたシミュレーションにおいて、胸骨圧迫中のAWSを用いた気管挿管は、McLに比して、初期臨床研修医において成功率が高く、有意に挿管時間も短縮された。