地域社会貢献事業との一環として高校生プログラムにおけるHPS の活用

 

1浜松医科大学医学部附属病院手術部、2浜松医科大学附属病院麻酔・蘇生科

中川智永子1 五十嵐寛2 森田耕司1 中島芳樹2 白石義人1

 

浜松医大では、文部科学省による理系離れの払拭と地域医療の担い手を切望する地方大学のニーズを踏まえて、地域社会貢献事業との一環として地元の高校生を対象とした公開プログラムを実施し、その中の一つに高機能型シミュレーター(High fidelity human patient simulator : 以下HPS)を用いたセミナーを行っている。このプログラムが、高校生たちにどのようなインパクトを与えるか、進路を決定する一助となっているかどうかをアンケート調査から検証した。

「対象」

静岡県内在住の進路決定前の高校1,2年生で医療職に興味のある者を公募した。

「方法」

プログラムの内容は現在医療者の人員が不足している麻酔科、産科、小児科、看護師が関与する帝王切開術を軸に、各科による講義、HPSセミナー、手術室の見学と質疑応答を行なった。参加高校生へのアンケートによる項目別評価を行い、プログラムの妥当性を検討した。HPSセミナーの内容は、HPS に対しての全身麻酔の導入を通じて生体の生理学的反応などを体験してもらう参加型セミナーである。

「結果」

平成21年までに計計8回、県内21高等学校(公立11校、私立10校)のべ188名が参加した。企画は概ね好評で、毎回参加希望者が多く次回に繰り延べなければならなかった。高機能シミュレータによるセミナーは、非常にインパクトが大きくフリーコメントに多く綴られていた。受講生のうち、平成204月に2名、平成214月に7名の計9名が浜松医大医学部医学科に入学した。

「考察」

このような地域社会貢献事業が実を結ぶか否かは数年後の参加者の進路調査を待たなければならない。また、麻酔科医のリクルートに役立つかどうかは更に数年待たなくてはならない。しかしながら、地域医療の担い手を発掘・啓蒙する意味での高校生を対象としたプログラムは、即効性はないものの将来的には意義があるものと考えられる