AHA ACLSプロバイダーコースの受講意義 ~ 受講者アンケート調査からの検討 ~

 

1兵庫医科大学地域総合医療学講座、2 兵庫医科大学麻酔科学講座、3同兵庫医科大学地域救急医療学講座、4公立八鹿病院総合診療科、5社会保険京都病院麻酔科、6兵庫県立姫路循環器病センター循環器科

山本憲康1、駒澤伸泰2、黒田達実4、木下 隆5、林 孝俊6、吉永和正3、福田能啓1

 

【背景】AHAAmerican Heart Association)のACLSプロバイダーコースは、心停止または他の心肺エマージェンシーに見舞われた成人傷病者に対する治療の質を向上させることを目標として、(1)BLS CPRの重要性、(2)効果的なBLSACLSとの統合、(3)蘇生中の効果的なチーム内のコミュニケーションの3つの主要概念を強調するようにデザインされており、呼吸停止、CPRAEDで治療するVFVF/無脈性VT、無脈性電気活動、心静止、急性冠症候群、除脈、不安定な頻拍、安定している頻拍、急性脳卒中の10ACLSコアケースを通じて、系統的アプローチと効果的なチームダイナミクスを学習するものである。心停止だけでなく心停止前状態を含むため、他の同様のコースと比較して学習量が多く、受講に合計3日間を要し、受講費用もかかる等の特徴を有している。また、実技試験と筆記試験があり、様々な面で専門医以外の受講者にとって負担が大きいという指摘や、日本のガイドライン(救急蘇生法の指針)ではなくAHAのガイドラインに準拠していることについても賛否両意見がある。

【方法】平成2012月から213月までの間に日本ACLS協会兵庫トレーニングサイトおよび京都トレーニングサイトにおいてACLSプロバイダーコースを受講した受講者を対象とし、受講前後にアンケート調査を実施して受講者背景や受講目的、受講意義について調査を行った。

【結果】対象は159名(医師114名(72%)、看護師31名(19%)、その他11名)であった。受講目的では医師、看護師とも「急変に備えるため」が57%と最多で、医師では「専門医習得のため」が46%で次いだ。また、医師においては44%がコース参加に対して「技術面で不安がある」と回答し、看護師においては87%が「知識面で不安がある」と回答していた。医師における重点的学習希望項目は「VF/VT」が最多であった。

 受講後の意識調査では、急変に対する自信を尋ねたところ、医師で70%、看護師で68%が「不安だったが自信がついた」と回答した。また、資格の範囲を超えて学ぶことについて、医師の93%、看護師の100%が「チームワークのために役立つ」と回答し、チームダイナミクスについては、医師の51%、看護師の74%が「蘇生現場以外でも役立と思う」と回答した。

【結語】AHA ACLSプロバイダーコースの受講により、職種を問わず、救命処置に対する自信が向上した。医師、看護師ともに知識、スキルの不安をかかえてコースに参加しており、基本スキルに焦点を絞った学習が有用と思われた。資格範囲を超えて救命スキルを共に学び、チームワークを強化することは、蘇生現場のみならず、それ以外の医療場面においても有用と思われた。