これまでのHPSを用いたシミュレーション教育の取り組み、そしてこれからのHPS

 

島根大学医学部麻酔科学教室

二階哲朗、三原 亨、齊藤洋司

 

これまで我々は約7年間にわたりHPSを用いた様々なシミュレーション教育の取り組みを行ってきた。当初は実際の麻酔臨床実習を円滑に行うため、バイタルサインの変化に気づくトレーニングにHPSを使用し、現在は、麻酔管理における循環呼吸管理の重要性を効果的に伝えることを目標に、実習初日にはHPSを用いてモニター管理の理解を深めることから始め、実習最終日にはシナリオを用い麻酔導入や管理を学生自身が試みるなど、積極的にHPSを取り入れたカリキュラムを行っている。

他のHPSを用いた取り組みとして、患者の危機的状況を生じる疾患としてアナフィラキシーショックを取り上げ、シナリオを作成、学生や研修医を対象にシミュレーション実習を行った。この取り組みは当初は学生や初期研修医だけを対象としたが、翌年からは医師を中心としたチーム単位の参加を呼びかけた。しかし参加は4グループにとどまった。現在は医師だけでなく看護師そしてコメディカルなど医療者全体を対象に、人工呼吸管理の対応や輸液を中心とした循環管理など臨床に即したシミュレーション講義に内容を変更した。取り組みを変えることで、受講者は増加した。また受講者からのアンケート結果から、シミュレーション教育への重要性や期待度の高さが明らかになった。しかし、現状では限られた人数しかこの教育を受けることしかできないという問題も明らかになった。今後HPSをもっと活用していくために、またシミュレーション教育を普及していくにはシステムの構築が望まれる。