教育講演(04

体表心電図の読み方.電気軸をどのように解釈するか?

京都府立医科大学麻酔科学教室

 

田中義文

 

  心電図解析は臨床医にとって最も基本的な知識であるが,その解説書は異常心電図波形ばかり強調され,なぜそのような異常波形になるかという疑問にたいして十分な説明がなされていない.そのために,心電図学を暗記の学問だと思うようになる.心電図とは,単純に心筋活動電位が体表面に反映するだけの純物理的電気現象だと認識し,さらに,体表の異なる二点間の電位差,すなわちプラス電極とマイナス電極の差の電位が心電図波形になるという原理,次に心室内刺激伝導系の解剖学的構造,活動電位の発する順番を理解すること.最後に,心筋での興奮がどのように全心筋に興奮伝導していくかという様を理解すれば心電図は必ずマスターできると.  心電図解析に電気軸というものがある.これはどの性理学書にもアイントーベンの三角として記載され,その主軸方向が問題とされている.しかし,その診断価値は分枝ブロックの発見以外に役立っていない.また,ベクトル心電図という測定法も過去にはあったが,現在は利用されていない.なぜ,興奮伝導で,問題にしているベクトルという概念が実際は疎かにされているのかについて小生なりの意見を述べてみたい.参考文献:体表心電図のメカニズム:心電図はなぜ特徴的な波形を示すのか?LiSA, p.72-79, vol13, NO01, 2006.Sicillian Gambitの先を見る.臨床麻酔, 31:1325-1340, 2007.「心電図のメカニズム(2)」イオンチャンネルとの関係を探る.LiSA, p.180-189, vol15, NO02, 2008.体表心電図の基本的性質とその読み方.日臨麻会誌 p.415-430, Vol.28, 2008.なぜ心電図はそのような波形になるのか?麻酔・集中治療とテクノロジー2007.p.1-16, 2009.