教育講演(12) |
TCI実践のノウハウ(初心者からオタクまで) |
広島総合病院麻酔科 中尾正和 |
商用TCIポンプはプロポフォールに対応し,充填済み専用注射器を装着して年齢,体重,目標濃度を設定したら利用できる.基本は薬が目標組織に届いて効果が出ることの理解である.日々の臨床でポンプの表示(目標濃度,血中・効果部位濃度,投与速度)から薬物動態を体感したい. 調節のこつ;効果が適切か否かを判断し,必要なら目標濃度を再設定する. 濃度は一定速投与でも2時間で安定するが,TCIでは10分程度で調節可能である. TCIはBlack Boxと思われるかもしれないが,マニュアルでもTCIに近い濃度を得ることはできる.ただし外部コンピュータ接続(手間をいとわなければ手入力でのシミュレーション)での支援が望ましい.商用TCIは薬剤を自動認識するので誤薬リスクが少ない安心と1500本の薬価差益でポンプ代が償還できるので管理者には購入をお願いしたい. 中級;タイトレーションする際にわざと増減してその反応をみることも勧められる.濃度を下げたい時にはポンプを単純停止させずに目標濃度を下げるのが術中覚醒防止のキーである.効果部位濃度(仮想)の概念を理解すると更にパワフルな管理ができる. 上級;より速やかな効果を得るために疑似効果部位テクニックを行いたい.(濃度を高くしたい時にはやや高めに設定し,後ですこし戻す) レミフェンタニル;対応したTCIポンプが入手不可で,本来はプロポフォールよりも効果の発現がより速やかにできるが,マニュアル投与しかできないため,まだまだコントロールが困難である.中等量のレミフェンタニルとプロポフォールの組み合わせでは,プロポフォールはほぼ一定濃度として,手術刺激に合わせてレミフェンタニルを調整することが行われている. |