教育講演(16

血糖管理の新時代;What is a NICE SUGAR for perioperative Patients?

岡山大学病院麻酔科蘇生科集中治療部

 

江木盛時

 

周術期患者は、インスリン抵抗性の増悪により高血糖を生じます。Leuven I studyでは、この高血糖を制御する強化インスリン療法(IIT)(80-110mg/dL)が周術期患者の死亡率を有意に低下させることが報告されました。現在、Surviving Sepsis Campaign Guidelinesでは、150mg/dL以下の血糖降下療法が提言されています。しかし、VISEP trial35.4% vs 39.7%P=0.31)とGlucontrol study(16.2% vs 19.5%P=0.15)では、IITは有意でないが死亡率を増加させることが、NICE-SUGAR trialでは、IITは有意に死亡率を増加させることが報告されました(24.9 vs 27.5%P=0.03)。このように同じ強化インスリン療法で死亡率に対して相反する結果が生じた理由として、1)研究施設数、2)心臓血管外科患者や糖尿病患者といった対象患者の構成、3)栄養管理法の相違、4)低血糖発生率の相違、5)Follow up期間の相違、6)血糖の変動の相違、7)Earl termination for benefitなどが考えられています。本演題では、Leuven I studyNICE-SUGAR trialの結果が異なったメカニズムについても、詳細に解説します。NICE-SUGAR trialでは、IIT群もコントロール群もほぼ1時間毎に血糖測定を行い、異なる目標血糖値に対しそれぞれ綿密に血糖管理が行われました。したがって, NICE-SUGAR trialの結果から、"周術期患者の血糖管理を綿密に行わないでよい"とう結論を引きだすことはできません。今後、新しい知見が加わるまでは、周術期患者の血糖管理は、血糖値が180 mg/dl を超えるまではインスリンを使用せず、インスリンを使用する際は、血糖値の目標は144から180 mg/dLとし高血糖と軽度低血糖の両方の発生を防ぐことが推奨されます。