教育講演(17

異型輸血はどこまで許されるか−異型輸血を避ける止血のための輸血治療−

愛知県赤十字血液センター

 

高松純樹

 

 異型輸血はどこまで許されるかという命題に重要なのは不適合輸血と異型輸血の意味の違いである。すべての輸血医療の根幹になる輸血検査の意味が必ずしも、十分理解されていないことが、緊急時の輸血の遅れに繋がり出血死を招くことになる。赤血球輸血ができること(適合している)は患者の持つ抗体と輸血血の間で抗原抗体反応が起こらないことである。ゆえに、輸血のための適合検査とは患者の持っている抗体と反応しない赤血球を選択し、確認する一連の検査を言う。そこで、検査すべきは患者の持つ抗体と輸血される赤血球の抗原である。1.ABO式血液型、2.Rh(D)式血液型、3.不規則抗体スクリーニング、4.輸血血のABO式血液型(オモテ試験のみで可)は必須である。患者検体の検査に際しては同一患者の異なる検体での検査と同一検体の異なる技師による検査であり、血液製剤の型確認はパイロットチューブを検体として行う。 不適合輸血はすべて異型輸血であるが、異型輸血は必ずしも、不適合とは限らない。つまり、輸血血が同型であるということは適合輸血のための十分条件であって、必要条件ではなく、同型とは社会的必要条件であって、生物学的には十分条件である。緊急時の輸血で求められているのは救命であって、時に異型輸血ではあっても不適合輸血とならない組み合わせの輸血をすべきである。特に緊急輸血には救命第一であることから仮に異型輸血であっても、適合している組み合わせの輸血を躊躇してはならない。