教育講演(22

心エコー図法の進歩と麻酔科医としての経胸壁心エコーの使い方

松波総合病院麻酔科・集中治療部

 

赤松 繁

 

 人口の高齢化とともに,手術症例の高齢化が進行し手術リスク因子の増加をもたらし,術前評価および周術期管理の重要性が増している.これに対して,ACC/AHA等から非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドラインが発表されている.侵襲的検査は,全ての患者に施行することは非現実的で,その結果が治療戦略に大きく貢献する場合に限り施行するとした考えになってきている.また,術前に用いられる画像診断は,X線写真に始まり,CTMRI,超音波検査などの検査が各々の特徴を生かした形で行われている.麻酔科医は,問診,理学的所見や非侵襲的検査などの画像情報を的確に評価し,術前評価と術中管理法の選択に生かさなくてはならない.

超音波検査は,非侵襲的に繰り返し施行できる機動性に優れた検査法である.一方,使い方によっては検査結果が検者の技量に左右される検査法である.心エコー図法は,断層法・ドプラ法の開発以降,急速に有用性が高まり,現在では術中経食道心エコー図法(TEE)としても用いられている.しかし,術前評価に用いられるのは経胸壁心エコー図法(TTE)であり,TEEも術前のTTEを踏まえた上で施行することによってその有用性は高まる.また,周術期の偶発的な緊急疾患に対してもTTEはベッドサイドで非侵襲的に重要な情報を提供でき,診断的手法であった心エコー図法を周術期の治療戦略に役立てることができるようになっている.本講演では,TTEの基本的事項,手法から新しいテクノロジーまでを解説し,麻酔科医としてTTEを周術期管理にどのように活用するかを術前の心機能評価を中心に言及する.