教育講演(23

東洋医学とペインクリニック

帝京平成大学ヒューマンケア学部はり灸学科

 

高橋秀則

 

 昨今東洋医学がブームである。東洋医学講座が開設される医学部も増えており、西洋医学と東洋医学の統合を目指す動きがみられる。医療現場で2つの異なったアプローチが出来れば治療の選択も広がり、患者の健康増進に繋がることは間違いないであろう。 しかしながら、一言で東洋医学と言ってもその理解は医療従事者によってかなりばらつきがあるのが現状ではないだろうか?本場中国では東洋医学の専門家は「中医師」であり、西洋医学とは別個の資格を持ち、包括的に中医学(湯液、鍼灸、気功、薬膳など)を実践できる立場にある。振り返って我が国では、病院診療で我々が関わるものは漢方薬に偏りすぎている感があり、その他の分野は「代替医療」として位置づけられ、西洋医の理解を得られているとは言えない。 一方ペインクリニック領域の疾患に対し、東洋医学的アプローチが功を奏する場面が数多くみられる。この事実を踏まえ、さらにこの領域を発展させるためにも演者は以下の様な認識を会場の先生方と共有したい。また、臨床例を挙げつつ東洋医学をどのようにペインクリニック領域で生かせるか考察する。1) 東洋医学は漢方薬だけがその治療手段ではないこと。特にはり灸と漢方薬(湯液)は中医学においては車の両輪である。2) 漢方薬は我が国で主として用いられる「和漢」だけではないこと。例えば中医学で用いられる湯液は漢方薬よりも処方の幅が広い。3) 基礎となる学説が同じでも、東洋医学的診断(弁証)の仕方(舌診、腹診など)が流派によって異なること。4) 治療方法(処方、配穴)の中には東洋医学的な考え方に依らずとも、ある程度の効果が期待できるものがあること。