教育講演(24

手術時におけるデクスメデトミジンの使用

財団法人田附興風会医学研究所北野病院麻酔科

 

足立健彦

 

塩酸デクスメデトミジン(DEX)は「集中治療下で管理し、早期抜管が可能な患者での人工呼吸中および抜管後における鎮静」を効能・効果として2004年から日本で販売されている強力かつ選択性の高いα2アドレナリン受容体作動薬である。本剤は鎮静、鎮痛、交感神経抑制作用を併せ持つが、従来の鎮静薬とは異なり、呼吸抑制作用を殆ど有さないというユニークな特徴を持つ。その開発の歴史は古く、既に1988年には動物実験においてDEXを投与することによって吸入麻酔薬のMAC(最小肺胞内濃度)が減少したという報告が見られる。あまり知られていないが実はDEXは臨床においても手術時の全身麻酔の併用薬として開発され、日本でも第2相の臨床試験まで行われたという歴史を持つ。またアメリカにおいては局所麻酔時のMACMonitored Anesthesia Care)の薬剤として、及び気管支ファイバーによる覚醒下気管挿管時の使用薬剤として既に認可されている。現時点では日本においては適応外使用になるが、本院においても覚醒下開頭術、局所麻酔時のMAC、気管狭窄の気管形成術等において手術時にDEXを使用しており、その有用性を実感している。本講演においては、手術時におけるDEXの使用とその意義について、海外の文献と当院での使用経験を紹介する。