教育講演(26

超音波ガイド下硬膜外カテーテル留置の実際

名古屋市立大学大学院医学研究科麻酔・危機管理医学

 

笹野 寛

 

 20081月に英国のNICEnational institute for health and clinical excellence)が超音波ガイド下硬膜外カテーテル留置(以下USガイド下留置)に関するガイダンスを発表した。USガイド下留置は新しい手技でエビデンスは多くないが、留置困難が想定される状況下では有用であると述べている。超音波ガイド下中心静脈カテーテル留置と同様に安全性向上に役立つようになると考える。 講演では、文献的な考察とともに、我々の施設で20085月より導入したUSガイド下留置法の実際を紹介するとともに、その利点とピットフォールを3次元超音波画像データを含め紹介する。 USガイド下留置の実際: 皮膚消毒をする前に超音波断層像で硬膜外腔およびその周囲組織を事前にスキャンすることにより、皮膚刺入点・刺入の方向・刺入の深さを調べるプレスキャンガイド法と超音波断層像を見ながら針を進めるリアルタイムガイド法の2つを用いている。 超音波探触子を傍正中部に長軸方向に当て正中方向に振り、超音波画像上で破線状に現れる、椎体後面複合体(腹側硬膜・後縦靱帯など)を指標に約1−2cm手前の椎弓間組織(背側硬膜・黄靭帯・硬膜外腔)を同定する。プレスキャンガイド法では穿刺部位を椎弓間組織が頭側に約10度となる位置とし、穿刺距離を短くするModified Laminar Approachに準じた穿刺法を行う。リアルタイムガイド法では針の同定の容易な小型コンベックスタイプの探触子を用い椎弓間組織へ針先を進める。穿刺部位は原則として椎体後面複合体が広く観察できる部位を選択する。 本講演を聴いた若手麻酔科医が、明日からの硬膜外穿刺の前に超音波断層像を見ようと思うきっかけになれば幸いである。