教育講演(27

痛みの評価法

獨協医科大学麻酔科学教室

 

濱口眞輔

 

痛みの評価法は多くの医療従事者が患者の状態を個々の主観によらずに把握でき,患者も自分の状態を複数の医療従事者に動揺に伝えられる手段である必要がある.痛みは患者の持つ内的経験であることから,外部から痛みを評価することは非常に困難であり,患者側,医療従事者側の人間としての背景も評価に大きく影響することによる.痛みの評価は疾患の診断や治療効果の判定に不可欠であるため,評価に際しては患者や医療従事者の背景にかかわらない評価法が確立されることが望ましい.現在,患者の訴える痛みを評価する方法として最も知られているのが視覚アナログ尺度(VAS)である.VASは理解しやすく,実施や評価が簡単で再現性も高いため,Numbering Rating ScaleNRS)やフェイススケールなどとともに今日でも広く使用されている.また,マクギル疼痛質問表(MPQ)などの質問紙法も有用である.これらの評価法以外には温度刺激法や機械的刺激法などの痛覚伝導系を評価する方法がある.特に機械的刺激法の一つであるpin-prick testは日常の診療でも頻繁に用いられている.そして,近年では,痛覚線維の電気的被刺激特性の差を利用した測定器であるNeurometerによる電流知覚閾値の測定,患部に電極パッドを付けて微弱な電流を流し,痛覚を感じた段階をみることで痛みを数値化できるペインビジョンなどが疼痛評価の有用な手段として開発されてきた.これらの疼痛評価法に加え,より客観的に疼痛を評価するにはサーモグラフィやペインイメージングなどの画像診断方法を用いる.疼痛の客観的評価は現在でも確立されていないが,今後の有用な評価法の確立が期待される.